アジア・サケ・フェスティバル とは?

✔️ アジアにおける日本酒市場の活性化を目的とし、 アジア諸国の国際都市で日本酒のもつ豊かな風味を味わい、楽しんでいただくイベントです。

✔️ 2022 年・2023 年 1 月と、シンガポールを舞台に主にコンシューマー向けの「日本酒テイスティングセミナーとブラインドテイスティング」を実施しました。(令和 3 年度 国税庁 ブランド化・酒蔵ツーリズム補助金)

✔️ 2023 年 9 月もシンガポールを舞台に、プロの審査によるコンペティションと、コンシューマー向けのテイスティングイベント、そしてプロ向けの試飲会も開催します。


「アジア・サケ・フェスティバル:シンガポール 2023」( 実行委員長 松崎 晴雄 )

日本酒輸出が好調に推移する中、特にこの数年間はコロナ禍にもかかわらず、香港、中国、シンガポール等アジア諸国にあって、日本酒の輸出は金額、量ともに大きく伸長しています。

アジア各国にて、アジアの人たちに日本酒の奥深い魅力と、日本酒が取り持つ豊かな周辺文化を伝えていくことを目的に、2021 年より「アジア・サケ・フェスティバル」を開催する実行委員会を起ち上げました。2021 年度、2022 年度と 2 年連続で国税庁の「ブランド化補助事業」の採択を受け、まずシンガポールをターゲットにイベントを行うことといたしました。

そして 2023 年 9 月 23 日・土、24 日・日、25日・月の 3 日間、シンガポールにて日本酒の普及、輸出促進に向け、「アジア・サケ・フェスティバル:シンガポール 2023 」を開催することといたしました。

Ⅰ. 目的

< 1 > 吟醸系以外の酒質を広めていく

アジア諸国で日本酒の人気は高まってきていますが、市場が成熟するにつれて大吟醸酒を筆頭に、口あたり良く華やかな吟醸系の酒質が偏重される傾向があります。製造に高度な技術を要し、洗練された風味の大吟醸酒は、高級酒としてのステータスがあります。これらの酒質が海外市場で日本酒のイメージを牽引していくことは、妥当なことと感じています。

しかしながら最近は現地で日本酒の輸入販売にあたる人たちの間でも、「一般消費者や料飲店などが、大吟醸以外には関心を示さない」と指摘する声も上がっており、今後の市場を開拓していく上での課題になっています。別の言い方をすれば、吟醸酒以外の酒質をアピールし需要を上げることができれば、今以上にアジアの日本酒市場は拡大していくと言えるでしょう。

そこで前回に引き続き、「純米酒」の魅力を掘り起こし伝えていくことをテーマに設定し、各イベントでは多様なスタイルの純米酒を紹介してまいります。香味の幅が広く、また精米歩合の違いなどがわかりやすい純米酒の飲み比べを通じて、日本酒の多様性や地域性、原料米品種の違い、日本食以外との相性の良さなどについて、理解を深めてもらうことを狙っております。

< 2 > 日本酒特有のきき酒の概念、技術を広めていく

日本酒が国際化する中で、海外でも日本酒を学ぶ講座が開催されるようになってきました。また世界各地で行われるワインやスピリッツのコンペティションでは、単独で日本酒部門、SAKE部門を設けるところが増えています。

これらのセミナーやコンペティションでは、ワインの手法にのっとって日本酒をテイスティングし、評価することが一般的です。世界的に先行するワインの市場や専門家がそのノウハウで日本酒を語り、伝えていくことは素晴らしいことだと思います。しかしながら日本酒が日本国内で独自に培ってきたきき酒の方法や、香味に対する基準なども合わせて教えていく必要があると強く感じています。

例えばワイングラスではなく日本酒用の酒器を用い、温度による味わいの差を伝えることはワインの領域にはない概念です。海外で日本酒の販売や提供、あるいは製造に携わる人たち、また熱心な日本酒愛飲家に、日本酒の微妙な香味の差異を伝えていくプログラムが必要だと考えています。

< 3 >コンペティションの結果を販路拡大につなげていく

海外で日本酒に対する周知が進むにつれて、SAKEの部門を設けたコンペティションが盛んに行われるようになりました。その目的の 1 つとして、上位入賞酒を表彰し製品の価値を高め販路拡大に結び付ける、有力なマーケティング手段であることが挙げられます。ただし多くのコンペティションは、出品酒を集めて審査を行い「金賞」「銀賞」といった賞を発表するところまでで終わってしまい、その後のビジネスにつながるプロモーション、イベント等が実施されていない状況にあります。


そこでこの問題を解決すべく、「ピープルズ・チョイス」と、新たに実施する「アジア・パシフィック・サケ・コンペティション」の結果発表後に、全出品酒をきき酒できる試飲会を実施します。このイベントを盛大に実施することにより、現地市場における日本酒の価値や情報発信を行うだけでなく、受賞酒を新たに仕入れたり、販売量を拡大したりと、現地酒類業者、料飲業者等のビジネスに資することができます。コンペティションの結果を販売量の拡大に結び付けていくことは、今後の海外輸出戦略の上で重要なポイントであると考えています。

Ⅱ. シンガポール開催について

2021 年度、2022 年度と 2 年続けて、国税庁の「ブランド化推進補助金事業」に採択され、ともにシンガポールにて 2022 年2 月に「テイスティング・セミナー」と「ピープルズ・チョイス」、2023 年 1 月に「テイスティング・セミナー」と「ペアリング・ディナー」を実施いたしました。

引き続き開催地にシンガポールを選んだ理由として、日本酒に対する高い関心があり、昨年 2022 年も輸出金額が 23 億 26 百万円と 130% 以上伸長し、輸出単価も 1 リットル当たり 2,535 円と輸出先の 10 位以内では、香港に次ぎ 2 番目に高いこと。しかしながら吟醸酒以外の酒質の認知が低いこと等があります。

またすでに現地の日本酒関係者、愛飲家向けにセミナーを開催し、私たちと同様に各種の課題を感じている「Premium Food」社・Cheong Tack Wai氏と連携し、同氏のネットワークを通じて、現地の有力なインポーター、オピニオン・リーダーなどにも協力を呼び掛けています。


シンガポールが地理的、経済的に東南アジアのハブとしての機能があることから、同国を基点にして今後は同じように成長している日本酒市場を持つ、バンコクやクアラルンプール等、近隣の国際都市でも同じコンセプトで「アジア・サケ・フェスティバル」を展開していくことを計画しております。

Ⅲ.「アジア・サケ・フェスティバル:シンガポール2023」実施内容

会期は 9 月、「アジア・パシフィック・サケ・コンペティション」の審査、「パブリック・テイスティング」と「ビジネス・テイスティング」をそれぞれ BtoC、BtoB の対象を分けて実施します。

< 1 >「テイスティング・セミナー」 (調整中)数回に分けて開催予定

この後で実施する「ピープルズ・チョイス」に参加する現地日本酒愛好家を公募し、100名を目標に、日本酒のテイスティング方法、香りや味わいから酒質の特徴等を学ぶセミナーを実施します。多様な酒質体験を通じ日本酒への理解を深め、テイスティング手法を習得することで、今後はよきオピニオン・リーダーとして、現地における日本酒普及のキーマン育成を目指します。


< 2 >「ピープルズ・チョイス・アワード」 ( 調整中 )

今回より「ピープルズ・チョイス・アワード」と改称し、セミナーで習得した内容に基づいて、香味の特徴を理解しながら、実際に日本酒をきき酒し評価します。。 
参加者はブラインドでテイスティングし「very good・good・fair(まあまあ)・not my style(自分の好みではない)」のどれかを選び、「very good」が4点、「good」が3点、「fair」が2点、「not my style」が1点として集計し、高得点となった酒を公表します。
「ピープルズ・チョイス・アワード」の結果は嗜好調査にもつながりますので、業界関係者や消費者の商品選定の指針とするほか、出品した酒蔵様には結果をフィードバックし、マーケティングに役立つようにいたします。


< 3 >「アジア・パシフィック・サケ・コンペティション」 ( 9 月 23 日 )

「ピープルズ・チョイス・アワード」は一般消費者や飲食関係者が参加対象者であるのに対し、こちらはプロの日本酒関係者(インポーター、エデュケーター、レストラン仕入担当、ジャーナリスト等)の審査を実施します。「ピープルズ・チョイス・アワード」と同じ酒をブラインドでテイスティングし、上位の酒を発表して市場での販路拡大に資することを目指します。


 *「ピープルズ・チョイス」「アジア・パシフィック・サケ・コンペティション」は、ともに同じ出品酒を募集し、「純米大吟醸酒部門」「純米吟醸酒部門」「純米酒部門」で審査を行います。

< 4 >「パブリック・テイスティング」 ( 9 月 24 日 )

「ピープルズ・チョイス・アワード」「アジア・パシフィック・サケ・コンペティション」の結果発表の場として、昨年度開催できなかった大勢の一般愛飲家やマスコミを対象に、全出品酒の試飲会を開催します。現地に参加する酒蔵様にはブースを用意するほか、出品された酒を輸入している現地インポーターの出展も歓迎いたします。
また同じ会場内に別室を設けて、出品酒の傾向や上位に入った酒の特徴について解説する、テイスティングを交えたセミナーも併催します。

< 5 >「ビジネス・テイスティング」 ( 9 月 25 日)

輸入業者、小売業者、通販業者、飲食業者等、日本酒ビジネスに関わる人たちに向けた試飲会。前日の「パブリック・テイスティング」同様に商談ができる場として、現地に参加される酒蔵の方、代理で出展する現地業者の方には、専用のブースを設置いたします。 

なお「パブリック・テイスティング」と「ビジネス・テイスティング」は、昨年度、一昨年度はコロナ感染拡大により開催できなかったため、2022 年 2 月に実施した「ピープルズ・チョイス」の上位酒も同時に発表いたします。
2 年分の表彰をこの機会に一緒に行う予定ですので、前回上位に入った出品酒の PR の場としてもご活用いただけます。

Ⅳ.今後の展望

今後は回を追うごとに日本酒とその周辺文化を紹介する、より幅広い内容にしたいと考えています。また現地の流通・料飲業者と協働しながら、シンガポールを基点に周辺他国でも日本酒の価値を伝え、日本酒が現地の食文化の中にも根差していくことを目指しています。

「ピープルズ・チョイス」「アジア・パシフィック・サケ・コンペティション」へのご出品は、「出品申込」ページをご確認ください。

〜これまでの実施内容〜

<2021年度>

新型コロナウイルスの感染状況が改善せず、会議やイベント等を行う場合最大 50 人までという規制がある中、2022 年 1 月、愛飲家と飲食業者 32 名を対象に、以下 2 つのイベントを行いました。

(1)日本酒のテイスティング方法、香りや味わいから酒質の特徴等を学ぶセミナー。
(2)セミナーで習得した内容に基づいて、香味の特徴を理解しながら、実際に日本酒をきき酒し評価。
参加者はブラインドでテイスティングし「very good・good・fair(まあま)・not my style(自分の好みではない)」のどれかを選び、「very good」が 4 点、「good」が 3 点、「fair」が 2 点、「not my style」が 1 点として集計し、高得点となった酒を公表する。
 
こちらの 2 つのイベントを組み合わせて「ピープルズ・チョイス」として実施し、現地の人たちのテイスティング能力を高めモチベーションを上げるとともに、さまざまな日本酒の香りや味わいに触れてもらうことで、酒質の多様性や飲み比べの楽しみを伝えました。

また「ピープルズ・チョイス」の結果は嗜好調査にもつながりますので、業界関係者や消費者の商品選定の指針とするほか、出品した酒蔵様には結果をフィードバックしました。

<2022 年度>
2023年1月に、「テイスティング・セミナー」と「ペアリング・ディナー」を実施しました。

「テイスティング・セミナー」は、「酒米品種の違いによる味わいの違い」と「地域性による日本酒の違い」というテーマで2回開催し、延べ35名の受講者に参加いただきました。

受講者の属性を見ると輸入業者、レストラン・オーナー、エデュケーターといった業界関係者のほか、半数以上は一般の愛飲家で年齢は 30 代から 40 代、男女比は 男性40%女性60%と、女性の方が多くなりました。全員がシンガポール在住で、日本人は 2 名のみでした。

日本酒の情報が少ない現地では、飲食店で注文する際などは有名銘柄や大吟醸系の酒質に偏りがちです。それ以外の酒にも目を向けてもらうためには、数多くある酒米品種や地域性の違いを知りそれぞれの味の傾向をつかむことで選択肢の幅を広げることが大切です。

「ペアリング・ディナー」
シンガポールは現地に住む中華系、マレー系、インド系の人たちのそれぞれの料理に加え、世界各地の料理が揃うグルメの国であり、豊かな味わいがある純米酒は、各種料理に合わせる懐の深さがあります。また吟醸系の酒質に比べても汎用性があり、かつ価格もリーズナブルです。普段日本酒を提供していないレストランでも、扱いを始めるには適した商材であると考えています。

日本酒の販路を広げていくためには、日系以外の市場の需要を拡大する必要があります。日本料理以外にも日本酒が合うことを認識してもらい、そのようなレストランへのチャネル開拓へとつながるよう、「ペアリング・ディナー」を 2 回開催しました。
 
第 1 回の参加者は19名。和食をベースにしているフュージョン料理で、9点の料理に20種の日本酒を合わせました。最初に日本酒と料理の合わせ方について松崎より10分ほどの短いレクチャーを行った後、1つの料理に2、3種の日本酒を決めて合わせていくという方式です。都度その理由や酒の特徴などを説明しながら実施しました。


第2回はシンガポール料理と四川料理を提供する海鮮料理店で、30名を集めて開催しました。9点の料理に25種の日本酒を用意し、参加者がそれぞれ酒を選んでマッチングを楽しむ方式で、酒は味わいの軽い方から濃厚な方に並べて、スパイシーな味付けのものが多く、普段日本ではあまり組み合わせることのない料理とどのような酒質が合うかを検証しました。

一連のイベントについて、参加者からは一様に実地に多くの日本酒の違いを知る貴重な機会だ、と好評をいただきました。参加者にはカフェのオーナーやシェフ等が複数いて、これらの人たちが今後シンガポールで日本酒を広めていくキーマンとして、活躍していくことが期待されます。

現地の人たちが香味の違いを知り、さまざまな料理との相性などを考案していくのは、日本酒に関する新たな価値の創造であり、新しい楽しみ方を発信することになります。「ピープルズ・チョイス」の目的は、バラエティー豊かな日本酒の世界観について理解を深めてもらうと同時に、多数のテイスティングを通じて飲み比べの楽しみを広めていくこともあります。今後も、このようなイベントを繰り返し実施する際に、酒質の多様性に着目して嗜好調査を進めていくことが重要だと感じています。

ASIAN SAKE FESTIVAL実行委員会

委員長:松崎 晴雄(株式会社SAKEマーケティングハウス代表取締役)
藤田 千恵子
柴田 亜希子

シンガポール
Cheong Tack Wai
Karen Tan