Asian Sake Festival in Singapore 2022 レポート
<2022 年度>
2023年1月に、「テイスティング・セミナー」と「ペアリング・ディナー」を実施しました。
「テイスティング・セミナー」は、「酒米品種の違いによる味わいの違い」と「地域性による日本酒の違い」というテーマで2回開催し、延べ35名の受講者に参加いただきました。
受講者の属性を見ると輸入業者、レストラン・オーナー、エデュケーターといった業界関係者のほか、半数以上は一般の愛飲家で年齢は 30 代から 40 代、男女比は 男性40%女性60%と、女性の方が多くなりました。全員がシンガポール在住で、日本人は 2 名のみでした。
日本酒の情報が少ない現地では、飲食店で注文する際などは有名銘柄や大吟醸系の酒質に偏りがちです。それ以外の酒にも目を向けてもらうためには、数多くある酒米品種や地域性の違いを知りそれぞれの味の傾向をつかむことで選択肢の幅を広げることが大切です。
「ペアリング・ディナー」
シンガポールは現地に住む中華系、マレー系、インド系の人たちのそれぞれの料理に加え、世界各地の料理が揃うグルメの国であり、豊かな味わいがある純米酒は、各種料理に合わせる懐の深さがあります。また吟醸系の酒質に比べても汎用性があり、かつ価格もリーズナブルです。普段日本酒を提供していないレストランでも、扱いを始めるには適した商材であると考えています。
日本酒の販路を広げていくためには、日系以外の市場の需要を拡大する必要があります。日本料理以外にも日本酒が合うことを認識してもらい、そのようなレストランへのチャネル開拓へとつながるよう、「ペアリング・ディナー」を 2 回開催しました。
第 1 回の参加者は19名。和食をベースにしているフュージョン料理で、9点の料理に20種の日本酒を合わせました。最初に日本酒と料理の合わせ方について松崎より10分ほどの短いレクチャーを行った後、1つの料理に2、3種の日本酒を決めて合わせていくという方式です。都度その理由や酒の特徴などを説明しながら実施しました。
第2回はシンガポール料理と四川料理を提供する海鮮料理店で、30名を集めて開催しました。9点の料理に25種の日本酒を用意し、参加者がそれぞれ酒を選んでマッチングを楽しむ方式で、酒は味わいの軽い方から濃厚な方に並べて、スパイシーな味付けのものが多く、普段日本ではあまり組み合わせることのない料理とどのような酒質が合うかを検証しました。
一連のイベントについて、参加者からは一様に実地に多くの日本酒の違いを知る貴重な機会だ、と好評をいただきました。参加者にはカフェのオーナーやシェフ等が複数いて、これらの人たちが今後シンガポールで日本酒を広めていくキーマンとして、活躍していくことが期待されます。
現地の人たちが香味の違いを知り、さまざまな料理との相性などを考案していくのは、日本酒に関する新たな価値の創造であり、新しい楽しみ方を発信することになります。「ピープルズ・チョイス」の目的は、バラエティー豊かな日本酒の世界観について理解を深めてもらうと同時に、多数のテイスティングを通じて飲み比べの楽しみを広めていくこともあります。今後も、このようなイベントを繰り返し実施する際に、酒質の多様性に着目して嗜好調査を進めていくことが重要だと感じています。