アジア・サケ・フェスティバル とは?

✔️ アジアにおける日本酒市場の活性化を目的とし、 アジア諸国の国際都市で日本酒のもつ豊かな風味を味わい、楽しんでいただくイベントです。

✔️ 2021年度はシンガポールを舞台に、主にコンシューマー向けの「日本酒テイスティングセミナーとブラインドテイスティング」と、プロ向けの試飲会を実施する予定です。(令和3年度 国税庁 ブランド化・酒蔵ツーリズム補助金)

✔️ 2022年度以降は、複数のアジア諸国の国際都市を舞台に、主にコンシューマー向けの「日本酒テイスティングセミナーとブラインドテイスティング」ならびに大規模なテイスティングイベント、プロ向けの試飲会を実施することを目標としています。

アジア・サケ・フェスティバル 趣意書( 実行委員長 松崎 晴雄 )

日本酒の輸入が好調に推移する中、アジアへの数量、金額は全体の5割を超えています。特に昨年はコロナ禍にもかかわらず、香港、中国、シンガポールといった国々で、日本酒の輸出は金額、量ともに大きく伸長しました。

元来アジア諸国とは、歴史的な結びつきが深く距離的に近いことに加え、米食や漢字など共通の文化があります。またさまざまな分野において日本産製品に対する信頼感が厚く、アニメやJ-POP等、若者の間で日本文化への志向が強まっていることも、追い風になっていると感じています。

私も日本酒の輸出に携わり、海外各地でプロモーションを行ってまいりましたが、経済発展著しいアジアのマーケットこそ、日本酒の成長戦略にとって不可欠なものと強く実感してます。

このたびアジア各国にて、現地の人たちに日本酒の奥深い魅力と、日本酒が取り持つ豊かな周辺文化を伝えていくことを目的に、「アジア・サケ・フェスティバル」を開催していくことといたしました。

<台湾での日本酒イベントの熱気(2019年)>



Ⅰ.アジア・サケ・フェスティバル イン シンガポール 2021 の目的

<1> 吟醸系以外の酒質の魅力も広めていく

アジア諸国で日本酒の人気は高まってきていますが、市場が成熟するにつれて大吟醸酒を筆頭に、口あたり良く華やかな吟醸系の酒質が偏重される傾向があります。製造に高度な技術を要し、洗練された風味の大吟醸酒は、高級酒としてのステータスがあります。

これらの酒質が海外市場で日本酒のイメージを牽引していくことは、決して悪いことではないと思います。 しかしながら最近は現地で日本酒の輸入販売にあたる人たちの間でも、「一般消費者や料飲店などが、大吟醸以外には関心を示さない」と指摘する声も上がっており、今後の市場を開拓していく上での課題になっています。

別の言い方をすれば、吟醸酒以外の酒質をアピールし需要を上げることができれば、今以上にアジアの日本酒市場は拡大していくと言えるでしょう。

第1回となります本年は、日本酒の輸出単価が高くコロナ禍にあっても輸出が好調な、シンガポールでイベントを開催いたします。

同国においても吟醸系の酒質に対する志向が強い傾向にありますので、このたびは“「純米酒」の魅力を掘り起こし伝えていく”ことをテーマに設定しました。

香味の幅が広く、また原料米や精米歩合の違いなどがわかりやすい純米酒、純米吟醸酒の飲み比べを通じて、日本酒の多様性や地域性、温度帯の違い、日本食以外との相性の良さなどについて、理解を深めてもらうことを狙っております。

<2> 日本酒特有のきき酒の概念、技術を広めていく

日本酒が国際化する中で、海外でも日本酒を学ぶ講座が開催されるようになってきました。また世界各地で行われるワインやスピリッツのコンペティションでは、単独で日本酒部門、SAKE部門を設けるところが増えています。

これらのセミナーやコンペティションでは、ワインの手法にのっとって日本酒をテイスティングし、評価することが一般的です。

世界的に先行するワインの市場や専門家がそのノウハウで日本酒を語り、伝えていくことは素晴らしいことだと思います。

しかしながら日本酒が日本国内で独自に培ってきたきき酒の方法や、香味に対する基準なども合わせて教えていく必要があると強く感じています。 例えばワイングラスではなく日本酒用の酒器を用い、温度による味わいの差を伝えることはワインの領域にはない概念も必要です。海外で日本酒の販売や提供、あるいは製造に携わる人たち、また熱心な日本酒愛飲家に、日本酒の微妙な香味の差異を伝えていくプログラムが必要だと考えています。

Ⅱ.アジア・サケ・フェスティバル イン シンガポール 2021 の内容

<1> シンガポール開催と現在の状況

実は「アジア・サケ・フェスティバル」の構想は3年前から練っており、当時よりシンガポールの輸入業者等と、実現に向けた話し合いを進めておりました。本年2021年度の国税庁のブランド化推進補助金事業に応募したところ採択され、実現することになりました。

第1回の開催地としてシンガポールを選んだ理由として、日本酒に対する高い関心があり、昨年も輸出金額で130%以上伸長し、輸出単価も1リットル当たり1618円と輸出先の10位以内では、香港に次ぎ2番目に高いこと。しかしながら吟醸酒以外の酒質の認知が低いこと等があります。 またすでに現地の日本酒関係者、愛飲家向けにセミナーを開催し、私たちと同様に各種の課題を感じている「Premium Food」社・Cheong Tack Wai氏との連携もあります。同氏のネットワークを通じて、現地の有力なインポーター、オピニオン・リーダーなどにも協力を呼び掛けています。

しかしながら同国も新型コロナウイルスの感染状況が改善しない中、会議やイベント等を行う場合、十分な広さがある室内で最大50人までに限ると規制されています。そこでコンパクトな内容に限定して、実施することにいたしました。

<2> テイスティング・セミナーと、「People’s choice(ピープルズ・チョイス)」

そこで先述の2つの目的に即して、今回第1回では愛飲家と飲食業者約100名を対象に、以下の2つのイベントを実施します。

(1)日本酒のテイスティング方法、香りや味わいから酒質の特徴等を学ぶセミナー。

(2)セミナーで習得した内容に基づいて、香味の特徴を理解しながら、実際に日本酒をきき酒し評価する「ピープルズ・チョイス」。

参加者はブラインドでテイスティングし「好みである・普通・好みではない」のどれかを選び、「好みである」が多く高評価となった酒を公表する。

こちらの2つのイベントを組み合わせて実施し、現地の人たちのテイスティング能力を高めモチベーションを上げるとともに、さまざまな日本酒の香りや味わいに触れてもらうことで、酒質の多様性や飲み比べの楽しみを伝えてまいります。 また「ピープルズ・チョイス」の結果は嗜好調査にもつながりますので、業界関係者や消費者の商品選定の指針とするほか、出品した酒蔵様には結果をフィードバックし、マーケティングに役立つようにいたします。

Ⅲ.今後の展開

シンガポールでの開催を基点として、今後は同じように成熟した日本酒市場となっている香港や台北など、アジアの諸国際都市で同名の「アジア・サケ・フェスティバル」のイベントを横断的に開催していくことを計画しております。 目的は前述の通り、吟醸系の酒質以外や日本酒のテイスティング手法を広めていくことにありますが、回を追うごとに日本酒とその周辺文化を紹介していく、より幅広い内容にしたいと考えています。

また現地の流通・料飲業者と協働しながら、各国各地域に日本酒の価値を伝え、日本酒が現地の食文化の中にも根差していくことを目指しています。